2001年度  〈研究報告の総目次〉


2001.4.5

[研究会]第1回[通算27回] 新年度研究会スタート(といっても、校正作業)

 『私小説研究』第2号の校正作業続く。今回は主に私小説起源を探る一覧表の調節を行った。大正期から現在までの作家・批評家約二五人を選別し、私小説の起源に関して言及した内容をまとめ一覧表にした。まず収集した内容を時代順(初出の年度順)に並べ、引用箇所に誤植はないか皆で確認した。その他、論文・書評など、最後の校正に入る。そろそろ第二号刊行を目前にし、期待高まるが、皆少々お疲れ気味。

[姜宇源庸]


2001.4.12

[研究会]第2回[通算28回] 第2号校正追い込み 

 『私小説研究』第2号も、最後の追い込みに入った。繰り返し校正作業はしているものの、校正は何回やっても心配だ。特に今回はインタビュー原稿の、話し言葉と書き言葉とのバランスに難しさを感じた。研究誌の追い込みをする一方で、そろそろ第3号のテーマ検討もはじまりつつある。今年は休んでいる暇はないなーという感じ。

[梅澤亜由美]


2001.4.26

[研究会]第3回[通算29回] 第2号最終校正と第3号編集会議スタート

 『私小説研究』第2号最終校正作業。創刊号より10頁余り多くなる予定。5月中旬には出来上がりそうだ。読者の皆様の期待に応えられるような出来となることを願う。あわせて第3号編集会議を行う。今年度のテーマは女性作家と私小説について。取り上げる作家・作品の候補をいくつか並べてみたが、今後更に検討していくつもりである。

[山中秀樹]


2001.5.24

[日誌]第2号発送

 数日前に第2号が印刷所から届き、本日発送作業を行った。雑誌奥付では4月30日刊行になっているが、結局遅れてしまった。いや、そもそも3月発行の予定だったのだが。第2号は増ページなのに値段据置なので、そのあたりでご容赦願いたい。なお、創刊号が品切れになっていたが、読者からの要望が多いので第2号の印刷と同時に増刷した。少部数の増刷はかなり割高になる。今後の増刷はおそらく無いので、創刊号をご希望の方はお早めに。

 第2号は難産だったが、出来上がるとその苦労も忘れる。ただ心残りなのは、二本予定していたインタビュー記事のうち、リービ英雄氏のものは掲載できたが、久保田正文氏のものは諸事情で見送られてしまったこと。次号で掲載する予定なので、お待ちいただきたい。

[とーます]


2001.5.26

[日誌]近代文学会で出張販売

 梅澤氏と共に、「私小説研究」創刊号、第2号を携えて、学習院大学で開催された「近代文学会」へ販売に行く。他の出版社が多数机を並べている端に場所を借りる。多くの研究者、学生が我々の研究誌に興味を持ってくれ、大いに励まされる。売り上げも好調だった。普段は味わえない刺激を受けることが出来た。第3号発行に向けて新たなスタートを切る。

[nuts]


2001.5.31

[研究会]第4回[通算30回] 続第3号編集会議

 先週、ようやく『私小説研究』第2号の発送を終え、今週から具体的な第3号の企画を立てはじめる。まず、外部の方に依頼する論文、エッセイ、インタビューなどについて話し合う。そして、研究会で各自が発表するつもりの時期、作家などを報告し合う。今年はより多くの大学院生に出席してもらえるよう、活動形態を少し改めた。月一回は会員が年間計画表に従った発表をし、もう一回は自由にテーマ設定出来るような形をとる予定。また、勝又先生にも顔出ししていただく予定である。

[梅澤亜由美]


2001.6.9

[日誌]昭和文学会販売報告

 昭和文学会が日本女子大にて開催された。2週間前の近代文学会に引き続き、ブースを設けて頂き、そこで販売することになった。今回の販売担当は姜宇、梅澤、松下の3名。今回は人数に余裕もあったので講演を聴くこともできた。実際の売上げだが、近代文学会に参加した方も多かったためか、前回の半分程度に留まった。だが、やはり出店して意義があったように思う。読んでくれた方の感想や御批判も生で伺うことができるからだ。今後とも、事あるごとに…とはいかないが、こういった形で出店できれば、と思う。

[nuts]


2001.6.22

[日誌]今年度予定表完成

 今年度の研究会予定表が届く。 次号の企画案付きだ。ここではその全貌は明かせないが、なかなか面白くなりそうだ。さて、特集名は仮称だが一応決定。「私小説・女たちの展開」だ。期待に応えるような、またよい意味で期待を裏切るような特集号を作りたいものだ。

[とーます]


2001.6.29

[研究会]第5回[通算31回] 本年度第1回発表・李良枝「由煕」

 本日は、姜宇さんによる李良枝「由煕」の発表。「在日」としての由煕のディレンマが論理としては説明不可能な非常に体感的なものである点や、あまり書かれていない語り手である韓国人の「私」の内面についてなどが問題になった。他に話題は日本との生活習慣の違い、「チョンセ」という韓国の部屋貸しのシステムなどにも及んだ。昨年より参加人数も増え、だいぶ賑やかになった感じだ。

[梅澤亜由美]


2001.7.4

[日誌]日韓共同文学シンポジウム案内

 7月21日(土)に、漢陽大学国際文化大学日本言語文化学科と法政大学大学院人文科学研究科の共催で、日韓共同文学シンポジウムが開催される。テーマは、「明治日本の近代化と文学・言語」。大学院勝又ゼミの人間が関わっているので、当サイトでも取り上げねばなるまい。ということで、特別ページを設けてみる。プログラムがそれ。 参加費は無料なので、興味をもたれた方は、お気軽にご参加ください。

[とーます]


2001.7.12

[研究会]第6回[通算32回]  大庭みな子「オレゴン夢十夜」

 今日は梅澤氏の大庭みな子「オレゴン夢十夜」についての発表だった。梅澤氏による綿密な作品分析、異界再訪譚の一つとする読みなどをもとにして、勝又先生をも含めて、なかなか活発な議論が行われた。その中で、大庭みな子の自我観、そこから発展して、近代から現在までの自我観に関する勝又先生の話は興味深いものだった。それによると、現代の自我認識は「漂う自我」で自我も又、信仰などと同様一人一人が作らねばならないものとなったという。私小説とは何かを考える上で、自我の問題は避けて通ることのできない重要なものである。研究会としても、個人としても、継続して考えていく必要があるだろう。

[山中秀樹]


2001.7.26

[研究会]第7回[通算33回] 林芙美子「放浪記」(の発表は中止)

 発表は林芙美子の「放浪記」が予定されていたが、発表者が体調を崩し欠席したためレジュメの回し読みに終わる。研究会の後、「日韓共同シンポジウム」の打上げがあった。参加者は勝又先生を始め9名。

[姜宇源庸]


2001.8.9

[研究会]第8回[通算34回] 「私小説時評」

 本日は山中氏による本年度「私小説時評」についての発表。今年度八月までの文芸誌(以後、継続予定)から、私小説と思われる作品、また、それに対する批評、それから私小説という概念を扱った批評が整理されていた。改めて見ると、私小説的作品はまだまだ多いという気がした。その中で発表では、大江健三郎「取り替え子」に関してと現在の文芸批評の在り方と絡めて、が中心となっていた。現在でも、その作品が私小説か否かということが、批評に大きく影響してい るので、少し意外な気もした。

[梅澤亜由美]


2001.8.23

研究会]第9回[通算35回] 「本居・夏目・小林」

 本日の研究会は、雨塚亮太に、『本居・夏目・小林――「私」の「道」という事』と題した、修士論文として提出予定のものについて、発表してもらう。(ちなみに本日は、私も網野菊「憑きもの」について発表予定であったが、準備不足のため、中止した) 本居宣長、夏目漱石、小林秀雄の三人を、一種独特な手付きで接続しており、興味深いものであった。とりわけ、発表者が補論として予定している、漱石、芥川、宮本百合子の作品に登場するそれぞれの「のぶこ」の多角的な検証というのは、今回の「私小説研究」のテーマである「私小説――女達の展開」を考える上でも有意義な観点なのではないかと思われた。

[橋口武士]


2001.9.13

[研究会]第10回[通算36回] 宮本百合子「伸子」

 今日は今年から研究会に参加するようになった井口氏による 宮本百合子「伸子」の発表。今日の話題は、もっぱら作品における「リアリティ」と はどういうものか、であった。これは、個人的な感性も影響してくるため、個人に よってかなり相違があり、「伸子」を越えて話題は果てしなく広がった。私小説はあ る意味「リアリティ」の文学である、しかし「リアリティ」とはと改めて考えると、 何とも捉えがたいもののような気もする。

[梅澤亜由美]


2001.9.26

[日誌] 「むくどり通信(近代日本文学研究目次情報メーリングリスト)」紹介

 インターネット上には、文学を扱った色々なサイトがある。今回紹介するのは、電子メールというネットワークを活かしたサイト。その「むくどり通信(近代日本文学研究目次情報メーリングリスト)」の前書きは以下のようになっている。

このメーリングリストについて

 「むくどり通信(近代日本文学研究目次情報メーリングリスト)」は、近代日本文学研究を中心としつつ、その周辺領域をも意識した新着雑誌の目次情報メーリングリストです。
  着想は「10分で出来るボランティア」。参加者が、自ら関係する/講読している/興味のある雑誌の新刊目次情報をポストすることで、その情報がメーリングリスト(ML)を介して他のメンバーに行き渡ります。個人個人の負担は少なくても、MLが拡大するに従って、メンバーに行き渡る情報の総量はとても大きなものになるはずです。参加者の小さな相互負担で、近代日本文学の研究環境を向上させていく。「むくどり通信」は、そんなMLです。

 メーリングリストは、あらかじめ指定されたアドレスにメールを送ると、登録している人全員に同じメールが配送される仕組みになっている。電子メールで結ばれたネットワーク上に、目次を中心とした書誌が作られるわけだ。「むくどり通信」のサイト自体は、このメーリングリストの入り口の役割を主にはたしているが、 投函されている内容を見ることもできる。また、[web上で見られる近代文学関係の雑誌目次]というコーナーでは、ネット上で雑誌の目次を公開しているサイトへリンクが貼られている。実は、「私小説研究」もすでにリンクされている。小誌のようなマイナー誌でも見つけてしまうのだから、そのネットワークはたいしたものだ。インターネット時代に入り、書誌の世界も新たな段階を迎えているようだ。

[とーます]


2001.10.4

[研究会]第12回[通算37回] 林京子「祭りの場」

 今回の発表者は齋藤秀昭氏。林京子の「祭りの場」について。発表内容は大きく三つに分けられる。八・九の語り部としての「私」。母性としての「私」。原爆を感覚で受け止める「私」。その中で主に論議されたのは、八・九の語り部としての「私」であった。「墓標のつもりで書いた」という言葉からも分かるように、「祭りの場」は15歳の時から背負い続けてきた作者の願いが込められている。研究会参加者の間では、被爆から「祭りの場」の発表までの30年間の空白は何を意味するのか、また、その後繰り返される彼女の仕事はどう意味付けするべきかなどの議論もあり、林京子には被爆によって一種の免罪符が与えられ、何から何までも許されているのではないかとの厳しい指摘もあった。

[姜宇源庸]


2001.10.11

[研究会]第13回[通算38回] 林芙美子『放浪記』

 本日の研究会は松下奈津美氏による林芙美子『放浪記』の発表。「私小説」という問 題にとどまらず、発表者、参加者から様々な意見が述べられた。ために、日記という スタイルをとっているせいか、どこか霞がかかった印象を持つ「放浪記」に、いくら かでも明瞭な輪郭が与えられたと思う。

[橋口武士]


2001.10.25

[研究会]第14回[通算39回] 河上徹太郎の「純粋」と「自然」

 今日は志賀浪さんによる河上徹太郎についての発表。修士論文の中間発表をひかえてのプレ発表となった。勝又先生もご出席。先生からは河上において「純粋」は避けて通れないのはもちろんだが、それにしてもこれまでは「純粋」に偏りすぎで「自然」の方にもう少し注目すべきでは、という指摘がなされた。また研究会では、河上が文学に求めた抽象的な概念をどう具体的に説明していくか、ということが話題の中心になった。修士論文に少しでも役立つことを願いたい。

[梅澤亜由美]


2001.11

[日誌]編集会議、11月編

 10月をもってゼミ形式による研究会はとりあえず終了。最近はもっぱらお茶会を兼ねての編集会議。論文については書ける人は、とりあえず全員書 いてみるという方針に決まる。この時期にいろいろなことをやっておくと、1月、2月の仕事が楽になるのだけれど、なかなか上手く行かない。とりあえず、インタ ビューの事前勉強、書評のリストアップ、アンケートの内容など、この時期にできる ことをやっておく。来年は思い切って、早く発表した人は11月締め切りにして、書 き直し期間を入れて12月提出にしたら、と考えたりもする。

[梅澤亜由美]


2001.12.6

[日誌]編集会議、12月編

 最近の研究会は、先月と同じく、勝又先生を交えての編集会議である。今日も、津島氏のインタビューの段取り、書評で取り上げる本と執筆者、それか ら来週の発送を控えてのアンケート送付者の選定など、決めなければならないことが 山積みであった。12月に入って急に忙しくなり、と同時に雑誌の輪郭が見えてきた感じだ。

[梅澤亜由美]


2001.12.7

[日誌] カリフォルニアからのメール

 たいして有名ではない当サイトではあるが、昔と比べると色々な方が訪れている。時たま感想をつづったメールなどが舞い込むのだが、今回はアメリカから。先に種を明かしておくと、メールをくれた、ジョージ・ウッドなる人物の正体は、カリフォルニア在住の日本人。文学に関しては素人とおっしゃっているものの、「私小説の小部屋」というサイトを管理されているあたり、かなり通だ。異文化のなかで生活するがゆえに、日本独自とされている「私小説」にひかれたという例。詳しくは「私小説の小部屋」を直接ごらんあれ。

[とーます]


2001.12.9

[日誌] 津島佑子氏インタビュー

 文京区の勤労福祉会館の一室を借りて、津島佑子氏にインタビューした。インド出発前でお忙しい中、貴重なお時間を割いて頂いた。5時の閉館ギリギリまでおつき合い下さった上に、夕食まで御一緒して頂いた。初めて口にするモンゴル料理、そして馬頭琴の調べ…なんだか夢のような空間だった。インタビューの主な内容は3号が出来上がってからのお楽しみだが、インタビューだけでなく普通の会話からも津島氏のお話する内容の視野の広さや豊富さがとても印象的で非常に勉強になった。改めてこの場 をお借りして感謝したい。

[nuts723]


2002.1.17

[研究会]第15回[通算40回] 津島氏インタビュー、第一回刈り込み作業

 今回は津島佑子さんとのインタビュー原稿の刈り込み作業を行う。約2時間分の話を原稿にしたら、何とB5紙28ページの量。これを3分の1に縮めるなんてとても難 しい。何一つ捨て難く、もったいない。この作業には勇気と決断力が必要だ。この他、第三号に載せる論文と書評を回し読む。今年は例年よりはやいテンポで次々と原稿が集まっている。3月の発刊に向けて現時点までは順調とみてよかろう。

[姜宇源庸]


2002.1.24

[研究会]第16回[通算41回] 小論検討

 今日は新たに、論文2本、小論3本、時評1本、の原稿が入る。全部を読んで検討をする。今回改めて感じたのは、小論の難しさだ。これは第2号から見開き1ページという指定をつけている。400字詰め原稿用紙だと、だいたい6枚半くらいなのだが、短くまとめるのは実は長いものより難しいようだ。次の号ではもう少し工夫をした方がいいかもしれない。

[梅澤亜由美]


2002.1.31

[研究会]第17回[通算42回] 論文輪読

 次第に原稿が集まる。斎藤氏、松下、志賀浪氏の各小論、論文を輪読。該当者はどきどきしながら会員の評を仰ぐ。まだまだ校了には遠いことを痛感。徐々にだが編集作業も進む。この調子で今年度も『私小説研究』第3号に向けて突進した い。それを原動力として原稿を直す。来週には校了したい。。

[nuts723]


2002.2.7

[研究会]第18回[通算43回] インタビューのゲラ間近

 前回からの引き続きとして、小論及び論文の輪読と検討を行う。津島さんインタビュー原稿の作業はほぼ終わり、後はゲラの段階での修正のみとなる。これで第3号なのだが未だに試行錯誤の過程あり。来年度(今年)の編集方針はもう少し合理的な方法をとったほうがいいのかも。

[姜宇源庸]


2002.2.14

[研究会]第19回[通算44回] チョコレートよりも

 今日はバレンタイン・デーだが、組版担当者としては、チョコよりも原稿やゲラの方が切に欲しい。春はまだ遠いなあ……。

[とーます]


2002.2.21

[研究会]第20回[通算45回] 未入稿原稿、残りわずか

 未入稿の原稿も残りわずか。松下氏による林芙美子「放浪記」も、一部手直しをして入稿ということになった。アドバイスとはいえ、みなにいろいろ注文をつけられて大変だったと思います。ご苦労様でした。橋口氏による小論原稿、網野菊「一期一会」については、もう2、3歩というところ。とはいえ、パソコンが故障中というアクシデントに見舞われたので、少しかわいそうな面も。本日新しいパソコンが到着したようなので、来週にはきっといい原稿が出来上がってくるはず……(この場を借りて、少しプレッシャーをかけときます)。

[梅澤亜由美]


2002.2.28

[研究会]第21回[通算46回] 網野菊「一期一会」論、検討

 今回は橋口氏による網野菊「一期一会」論の発表及び論文の検討が行われた。研究誌第3号に小論として載せる予定であるため、少々テンポの遅い感を否めない。その他の原稿は殆ど収まり、後はゲラの校正のみとなる。今回も既に著者校を終えた書評・ 論文などを検討した。次回はいよいよ通しのゲラを手にすることが出来るらしい。第三号の刊行まで、あと半歩くらいかな。

[姜宇源庸]


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