2000年度  〈研究報告の総目次〉


2000.3.30

[日誌]正式運用開始

 今まで暫定的に運用していたサイトを正式なものにつくりあげる。しかし、HTMLというやつはよく分からない。専用のソフトを使っているが、DTPのレイアウトソフトとはかなり勝手が違う。いろいろと制限があり、思うようにレイアウトができないのだ。そのうち研究して、手を加えようと思う。

 本日昼に『私小説研究』創刊号の発送を行う。編集作業の遅れに加え、データがあがってから印刷に入れるまでに事故が重なり、どうなるかと思ったが、なんとか間に合った。

 発送の後は、早くも次号へ向けて研究テーマ等の検討を行う予定。研究会のみんながどのようなテーマを持ってくるか楽しみである。

[とーます]


2000.4.2

[日誌]感想第一号と山室静氏逝去

 創刊号で書評を執筆してもらった櫻井信栄氏より、電子メールで感想が届く。これが感想第一号となる。本多秋五氏のインタビューが面白かったという。題名は「あの頃の私と私小説」で、好々爺が若い者に昔話をするという感じのインタビュー記事である。 まとめるのに苦労したが、誉めてくれる人がいると企画した甲斐があったというもの。

 そういえば、本多氏と同じ『近代文学』の人であった山室静氏が3月23日に亡くなった。今回のインタビューは回想的なものであるから、お見せしたかったのに間に合わなかった。残念である。

[とーます]

 


2000.4.13

[研究会]第1回 会計報告と創刊号への反響

 雑誌完成から少し充電期間を経て、今年度の研究会の活動を開始。昨年度会計報告、『私小説研究』創刊号への反響を報告しあう。いくつか寄せられた反響には、自分達が気付かないような指摘もあり、今年度の活動をする上で示唆に富むものであった。意見、感想を寄せて下さった方々に、感謝申し上げたい。前年度の反省としては、雑誌作成よりも研究会の活動に関することが多かった。もう少し共同研究的なものを取り入れ、雑誌に発表出来るようにしようというものである。今年はそのあたりを視野に入れ、もう少し充実した研究会活動をしてゆきたい。来週は今年度の研究テーマを決める編集会議を開く。いよいよ始まる、という感じだ。

[梅澤亜由美]

 


2000.4.19

[日誌]『週刊読書人』で紹介される

 4月14日発売の『週刊読書人』(4月21号・第2332号)の8面、「マガジンレーダー」に『私小説研究』創刊号が取り上げられました。紹介文は、短いながらも要を得ています。論文の紹介の際には、副題まで記すあたりが丁寧。おまけに、表紙の写真まで載せてくれています。これに、当サイトのURLとメールアドレスを載せてもらえれば文句無しだったのですが。いやいや、それは贅沢というもの。会の連絡先はちゃんと記載されています。おかげで、早くも注文の連絡が来ている模様。なんにせよ、気合いの入った雑誌作りを評価してもらえたのでしょう。そこがなんとも嬉しい。

[とーます]


2000.4.20

研究会]第2回 第2号編集会議

 「私小説研究」第2号の編集会議を行う。特集テーマについてはまだ詰めていく必要あり。論文、エッセイ、インタビュー、アンケート、書評という全体的構成は、創刊号と同様。私小説時評については、今年一年に刊行された私小説、私小説関連の研究書・批評書を視野に入れながら検討してゆく予定。

 今のところ、創刊号に対する評判は良い方。第2号を創刊号以上のものにしなければならない、と会員たちの意気込みも高まっている。

 なお、「週刊読書人」5月の同人雑誌評で、白川正芳氏が「私小説研究」創刊号を取り上げてくださる予定である。

[山中秀樹]


2000.4.22

日誌]昭和文学会で販売

 4月22日、日本大学文理学部校舎にて行われた昭和文学会に、「私小説研究」の販売を兼ねて行ってきました。多めの部数を携えて、梅澤氏と完売する意気込みで乗り込みました。研究発表が始まるちょっと前に到着し、会場設営などのお手伝いをしようとするも、勝手が判らないため、役立たず。受付の横に机を置かせて頂き、発表の間に販売。この日は出席者が少ないかなと思っていたものの、終わる頃には18部を売っていました。そして、何より嬉しかったことは、たくさんの方々にお声をかけて頂いたこと。励みになり、勉強にもなりました。この場をお借りして改めてお礼を申し上げます。これに味をしめて(?)今後も多くの方と交流を図れたら良いなあ、と思っております。

[nuts]


2000.4.27

研究会]第3回 第2号、二度目の編集会議

 本日第2号にむけての、二度目の編集会議を行う。前半は、勝又先生もご出席。手始めに、少し私小説の起源を調べてみようということになった。 どのような結果が出るかは分からないが、手分けして過去の批評家がどういっているかを集めてみる予定。その他のことについては、まだまだ具体的な方向を模索中。来週は今年1月に出版された『語られた自己 日本近代の私小説言説』(鈴木登美著 岩波書店)を皆で読む。雑誌のヒントになるような発見をできるよう、じっくり討議したい。他に特筆すべきことは、新しいメンバー4人が参加してくれたことだ。フレッシュな力が加わり、昨年より活気ある活動が出来そうだ。

[梅澤亜由美]


2000.5.11

研究会]第4回 〈私小説の起源〉について

 今年度の大まかな活動計画について話し合い、あわせて「私小説研究」第2号の編集会議を行う。「私小説」の起源はどこにあるのか、ということが今の会員たちの関心事の一つである。とりあえずは、これまでの近代文学研究の言説の中で、どのようなことが言われてきたのかを整理することとなった。共同研究としての成果が第2号に発表できればと思う。

[山中秀樹]


2000.5.13

日誌]「週刊読書人」同人誌評と「噂の真相」文壇記者日記

 某氏からメールで、白川正芳氏の五月同人誌評が掲載されている「週刊読書人」(5月12日号)が発行されているという連絡が入る。かなり大きく扱っていただいていて、特集「戦後文学と私小説」を中心に言及されている。「この雑誌には現代文学における「私」の追求と、歴史的な「私小説」の研究とをからめて、新たな地平を見いだそうという狙いがあるように見受ける」という文章が印象的。

 その後、同じ某氏からメールで、「噂の真相」6月号に小誌が取り上げられているという通報、いや連絡が入る。急いで書店で確認すると、「文芸記者日記」で触れられている。特集に関しては言及されておらず、アンケート「「私小説」という言葉をどう読むか」と、中沢けい氏のエッセイを中心に紹介している。「まあ、この新雑誌「年一回刊」とあるが、今後に期待したい」というのが結び。どんなことを書かれているかと思いきや、好意的(?)な評なので胸をなでおろす。この記事は無署名。どこで誰が読んでいるかわからないということを痛感する。ついでに、年一回の刊行ペースを守ることを決意する。

[とーます]


2000.5.18

研究会]第5回 批評家・研究者の言う〈私小説の起源〉

 「私小説」の起源についてこれまでどんなことが言われてきたのか、とりあえず、調べてみたい批評家・研究者をピックアップし、担当を決めた。どのような結果が出るかは分からないが、できるだけ多くの結果を集めたい。  今年度は小説作品についても、「私小説」の生成期と思われる、1907年、明治40年頃にこだわる予定。編集会議的事項が先行し、具体的作品を皆で討議するといった活動はなかなか進まない。6月には作品討議を中心とした活動に持ってゆきたい。

[梅澤亜由美]


2000.5.25

研究会]第6回 清水紫琴「こわれ指環」

 本日は、田辺氏による清水紫琴「こわれ指環」(『女學雑誌』1891、明治24・1)の発表。私小説の起源に繋がる理論として、森田思軒「小説の自叙体記述体」(『國民之友』1887、明治20・9)を取り上げ、「こわれ指輪」をその実践と位置づける。非常に示唆に富む発表であった。個人的には、「自叙体」「私語り」の他にも、現代の「私小説」に繋がるようなものはあったのか、1880年代、明治20年代の「自叙体」小説にはどんなものあるのか、調べてみたいと思った。前回の戦後文学特集の際にもかなりの知識不足を実感したが、明治40年代以前は更に難しい気がする。大きな海を漂っている感じがしてならない、今日この頃だ。

[梅澤亜由美]

 


2000.5.26

日誌]小田切秀雄氏逝去

 5月25日、小田切秀雄氏が逝去された。『私小説研究』創刊号掲載の本多秋五インタビューは、氏のご協力がなければ掲載されなかった。齋藤秀昭の論文「小田切秀雄と私小説―小林多喜二『党生活者』を巡って―」が掲載されるので、創刊号では執筆面でのご協力は願わなかったが、第二号ではエッセイをお願いしようと思っていたのに。創刊号に関連記事が二本掲載できたことを、せめてもの慰めとする。

[とーます]


2000.5.27

日誌]「図書新聞」同人誌時評

 「図書新聞」2488号(2000年6月3日)が到着。詩人の、たかとう匡子氏が執筆の「同人誌時評」に「私小説研究」が紹介される。「私小説のからみで言えば、同人誌ではないが」というのが導入で、特集について言及がなされている。「私小説のからみで言えば」とあるのは、その直前に「樹林」(春号 vol.424)掲載の、津島祐子「『私』と想像力」 について触れられているから。これは講演記録なのだが、読んでみると面白い。私小説は英語だと「i-novel」ではなく「private novel」(私的小説)と呼ぶべきだとか、柳美里裁判と絡めて私小説とモデル小説とを区別すべきとか。さらにアイヌの口承文芸と絡めて話が進む。「樹林」は大きな書店なら店頭に並んでいるし、星雲社が発売元なので書店で注文することも可能。興味のあるかたは実際に読んでいただきたい。

[とーます]


2000.6.6

研究会]第7回 尾崎紅葉「青葡萄」

  森田思軒「小説の自叙体記述体」を再び検討。「自叙体」が一人称として、「記述体」とはどういうものを指しているのか、単なる三人称と考えていいのかなどが話題となる。今後は1890、明治20年前後の「自叙体」小説を実際に検討してゆく。現在の所、10数編がリストアップされているが、来週は嵯峨の屋お室「初戀」(1889、明治22年1月『都の花』)、饗庭篁村「良夜」(1890、明治23年10月『國民の友』)を検討する予定。また、『私小説研究』第2号のインタビュー企画の内容を正式決定。いよいよインタビューの依頼、質問作成などに動き出すことになる。再来週には、各批評家の「私小説」起源説について、報告会が予定されている。夏期休暇を目前に、いよいよ忙しくなってきたという感じだ。

[nuts]


2000.6.25

日誌]変わった反響 『福永武彦研究』第5号

 福永武彦研究会から年一回刊行されている『福永武彦研究』第5号が出た。この雑誌、実はトマス工房の小生が組版を担当している。小生の友人(福永武彦研究会会員)が編集担当者に『私小説研究』創刊号をお見せしたところ、値段の割にはよくできているとお思いになったようで、小生に話がきたというわけである。

 福永武彦研究会のサイトが併設されている高野泰宏さんのサイト「文学作品を読む」のURLは以下。メールで購入申込みができるようになっている。

http://www04.u-page.so-net.ne.jp/ga2/tyasu/

 以上、こういった形の反響もある、という話である。 

[とーます]


2000.6.29

研究会]第8回 森田思軒「小説の自叙体記述体」

  森田思軒「小説の自叙体記述体」を再び検討。「自叙体」が一人称として、「記述体」とはどういうものを指しているのか、単なる三人称と考えていいのかなどが話題となる。今後は1890、明治20年前後の「自叙体」小説を実際に検討してゆく。現在の所、10数編がリストアップされているが、来週は嵯峨の屋お室「初戀」(1889、明治22年1月『都の花』)、饗庭篁村「良夜」(1890、明治23年10月『國民の友』)を検討する予定。また、『私小説研究』第2号のインタビュー企画の内容を正式決定。いよいよインタビューの依頼、質問作成などに動き出すことになる。再来週には、各批評家の「私小説」起源説について、報告会が予定されている。夏期休暇を目前に、いよいよ忙しくなってきたという感じだ。  

[梅澤亜由美]


2000.7.6

研究会]第9回 二葉亭と根岸派

  その前の週に課題となっていた、二葉亭と根岸派のものをそれぞれ読み、「私小説」の可能性や萌芽の有無について検討する。話し合った限りでは、二葉亭のもののほうが、やはり検討してみるに有益であろうということになった。具体的には、二つの方向性、「自己暴露」―「告白」、の路線、それから、「自然」と「私」の関係性、その二つを大きなテーマとして、変遷を辿り、「私小説」へと発展していく過程を探ってみるつもりである。次回は、広津柳浪の『落椿』を検討する予定。 

[W+T]


2000.7.21

研究会]第10回 批評家リサーチ

  批評家リサーチの結果報告を行う。これは「私小説の起源はこれまでどう言われてきたか」を知るための、「私小説研究」第2号の大事な企画だ。調査結果はまずまずといったところ。今後も調査は続行してゆく予定だ。大学院も夏期休業に入る。研究会もしばらくお休み。各自、リフレッシュして後半の研究会を迎えたい。もちろん、休み中には自分の研究も各自しっかり進めておく予定だ。

[梅澤亜由美]


2000.8.16

研究会]第10回 批評家リサーチの経過報告と森鴎外「舞姫」

 久々の研究会。批評家リサーチの経過報告と森鴎外「舞姫」(1890、明治23年1月「國民之友」)の検討を行う。他に、「私小説研究」第2号に発表する各自の研究経過などを報告しあった。この後、再び1ヶ月程の休みに入る。後期が始まったら、いよいよ雑誌編集の仕事が忙しくなる。それまでには、各自の担当する分野についてはある程度の目鼻を付けておくことを改めて確認した。

[梅澤亜由美]


2000.9.25

[日誌]雑誌『法政』で紹介される

 法政大学 広報・広聴課の方よりメールで連絡が入る。雑誌『法政』で紹介記事を掲載したところ、読者から入手方法の問い合わせがあったので至急教えて欲しい、とのこと。慌てて『法政』九月号を見ると、確かに紹介記事が表紙写真入りで掲載されている。早速、こちらの連絡先をお伝えいただくよう、お願いする。

 さて、その紹介文の中で「準備に7年の歳月をかけたという創刊号」という文章がある。これは、創刊号編集後記の「法政大学大学院勝又ゼミが私小説に取り組み七年がたつ」という文章を受けたもののようだが、雑誌制作に七年かけたと読まれかねない。ゼミ活動として私小説に取り組んだ最初が七年前であり、実際の所は、本格的な企画のスタートから発行まで、一年しかかけていない。よくまあ一年で出来たものだと今更ながら思うが、早くも本年度は後期に突入するから、感慨にふけっている場合ではない。本腰を入れねば。

[とーます]


2000.9.28

[研究会]第11回 後期研究会スタート 

 今日から後期の研究会がはじまる。これからは徐々 に、実質的な編集作業が増えて行く予定。今日の研究会のテーマは、私小説と恋愛体 験。私小説を内容で分類してゆけば、恋愛、あるいは情痴の体験を描いた作品はかな り多い。よって後半は、恋愛体験を描いた中でも、ジャーナリズムとの関係を強く持 つ作品についてが話題になった。個人的にとても興味ある方向なので、恋愛・ジャー ナリズム(スキャンダル)を一つの視座として、今後研究を広げてみたい。

[梅澤亜由美]


2000.10.19

[研究会]第12回 太宰治、中期の小説と私小説

 『私小説研究』第2号の企画、原稿分量などもほぼ決定し、そろそろ原稿依頼やアンケート依頼の作業に入る予定。本日は、太宰治の中期の私小説の方法について研究報告が行われた。これは私小説源流に直接関わってくるテーマではないが、研究会会員が個人の研究テーマとして継続的に行っているものである。こういった研究報告とともに今後編集作業がいよいよ忙しくなってきそうである。

[山中秀樹]


2000.11.2

[研究会]第13回 島崎藤村「旧主人」

 今日は島崎藤村「旧主人」についての討議を行う。中心は「告白」と「告発」について。「旧主人」自体は一般にモデル小説とされている が、同時期の「水彩画家」などとともに実は藤村自身の思いが吐露されていると言わ れている。後の藤村の「告白」小説へのつながりを考える上で、この「告発」を「告白」したとも読める「旧主人」は重要という気がした。

[梅澤亜由美]


2000.11.14

[研究会]第14回 明治期の知られざる私小説的小説

 今回は、中込重明氏をゲストとして招いて、発表してもらうことになった。氏は、法政大学大学院で近世文学を専攻しているが、ここで明かすと研究の中心は落語や講談といった舌耕文芸。週に何度も寄席に通い、文筆でも『文学別冊 円朝の世界』(岩波書店、2000年)に寄稿するなど、寄席芸評価のために活躍する毎日。そんな氏だが、明治文学にも造詣が深く、今回は知られざる明治期の私小説的作品をいくつか紹介してもらった。作者と主人公が重なるような小説が多いが、ただそれが今日的な私小説に該当するかというと難しい。たとえば、ある小説は口語ではなく文語で書かれていて、散文というよりは韻文に近く、また人間の内面が描かれているわけではない。言文一致は、近代文学の成立に大きな役割を果たしたわけだが、私小説という近代文学の一ジャンルの成立においてもやはり大きかったということか。それはともかく、中込氏には今回の発表を元に、特集論文を書いていただく予定である。

[とーます]


2000.11.16

[研究会]第14回 久保田正文氏インタビュー・下準備

 今回の研究会は、インタビューをさせていただく予定である久保田正文氏の、『昭和文学史論』(1985年10月、講談社)中の、「私小説の問題とその作家 たち」と、「私小説と短歌的叙情」(こちらは『国文学 解釈と教材の研究』、昭和 41年3月、第11巻 第3号)をもとにしての、質問事項の作成が中心だった。『私小説研究』第2号の中心テーマである、私小説の起源・源流は何か?という 問題に、今回の氏へのインタビューが非常に重要なものとなるのは確かであるから、 どんな質問をさせていただこうかと、いきおい様々の意見が出た。 氏に多くの著作があることは周知の通りだが、今回のインタビューでは、また、私 小説の起源・源流の問題とからめて、例えば石川達三のことなどについても尋ねてみ るつもりである。。

[橋口武士]


2000.11.30

[研究会]第15回 武者小路実篤「お目出度き人」

 武者小路実篤「お目出度き人」に関する検討を行う。私小説の元祖とされることも多 い作品であるが、今回の発表者の視点は都市論に向いているようである。作品は「旧山の手」と「新山の手」への移行期を背景としている、「旧山の手」の住人である主人公「私」は「新山の手」へと向かう電車に乗車することを通して一般大衆あるいは 庶民と出会う(発見する)、という指摘は示唆に富むものであった。討議は「旧山の手」の住人である「私」は最終的には、そういった体験を通して変化しているのか、 あるいは変化していないのか、といった主に「私」に関する点に集中した。結局、 「私」が変化しているなら変化はどう意味づけられるのか、変化していないなら、そ れが何を意味するのかをもう少し検討しようということになった。

[梅澤亜由美]


2001.1.11

[研究会]第16回 新年、初の研究会

 新年明けてから初めての研究会。8名が参加。「私小説の源流」に関する明治期の作品に触れた山中氏、田辺氏、守屋氏の完成原稿を輪読、チェックする。編集作業に差し掛かっていることを実感する。次回の研究会は次週、18日(木)の予定。

[梅澤亜由美]


2001.1.14

[日誌]本多秋五氏逝去

 1月13日、本多秋五氏が亡くなられた。氏は、言うまでもなく戦後を代表する文芸評論家で、『私小説研究』創刊号のインタビューに快く応じてくれた方である。昨年は「近代文学」関係者のうち、山室静氏と小田切秀雄氏が亡くなられたが、とうとう最後の本多氏もこの世を去られてしまった。

それに僕ももう九〇を越したから、一〇年経てば一〇〇歳を越える訳だけれども、そんなに生きてて他人の世話になるばかりだから。早く死んだ方が良いと思っているんだけれども、不自然なことをするのはやっぱりおもしろくないから、いい加減なところでお迎えの風が吹いて来てくれると一番良いと思っている。

(『私小説研究』創刊号掲載インタビュー、本多秋五「あの頃の私と私小説」より)

 その言葉を味わいながら、氏の冥福を祈るばかりである。

[とーます]


2001.1.18

[研究会]第17回 書評リストアップ

 本日は先ず、書評する本のリストアップと執筆者の人選を行う。今週中には、各自依頼を済ます予定。そろそろ校正作業も始まり、一回の研究会でいろいろな作業をする ことが増えてきた。原稿も徐々に集まりだし、今日は、守屋君の武者小路実篤『お目出たき人』の原稿を皆で論評しあった。執筆者である守屋君も出席してくれたせい か、なかなか白熱した論議となった。この調子で、1月末には全ての原稿が集まると いいなあと思う。

[梅澤亜由美]


2001.1.25

[研究会]第18回 書評とインタビュー検討

 本日の会合では、正式に書評のリストアップと、インタビューに備えて質問事項を挙げた。雨の中出席者は4名、そして勝又先生にもご足労頂いた。次回にはゲラができてくる予定。いよいよ本格的な編集作業が始まる。

[nuts723]


2001.2.1

[研究会]第19回 校正開始

 すでにゲラとして上がっているエッセイ・論文を校正。インタビューする方の変更もあり、質問事項を念入りに再検討。いつインタビューに行ってもいいように準備万端にする。書評 についての依頼も再検討。2号は書評が多くなるかも知れない。それだけ、今年発表されたいわゆる「私小説」的作品が多いということか。

[梅澤亜由美]


2001.2.8

[研究会]第19回 校正2回目

 二葉亭四迷「浮雲」、近松秋江「雪の日」、清水紫琴「こわれ指環」の原稿を皆で検討する。問題になった箇所を、それぞれ手直してもらい入稿してもらう。それから現在の入稿状況の確認をする。書評も含めて来週には、だいぶ原稿が揃いそう。

[nuts723]


2001.2.15

[研究会]第20回 書評原稿検討

 今日は書評原稿3本について皆で検討をした。書評を読んだ人がその本を読みたいと思うようなものを、ということで書き手には少し辛口の意見が飛んでいた。創刊号は書評の数が少なかったという意見があったので、第2号ではできるだけたくさんの本を取り上げる予定。

[梅澤亜由美]


2001.2.22

[研究会]第21回 原稿読みまわし

 今回の研究会は、書評の原稿の読みまわしと、島崎藤村「旧主人」原稿の読みまわしなどが主であった。ちなみに、藤村「旧主人」の担当は私であったのだが、生来の怠惰と不勉強が祟ってしまい、今頃になって目も当てられないものを書いてしまった。ために、当然多くの疑問、意見が提出された。来週までには、今回の価値ある意見や疑問を踏まえて、しっかりとしたものを再度提出したい。

[橋口武士]


2001.2.27

[研究会]第22回 リービ英雄氏インタビュー

 本日、リービ英雄氏にインタビューに伺った。五人という大人数で押し掛けたにも関わらず、親切に迎えて下さった。内容はもちろん私小説に関することだが、氏はやはり作家なので主に創作者としてのお話が中心になった。本題の私小説に関して2時間ほどお話を伺い、その後30分ほど雑談につき合って頂いた。大変気さくな方で、有意義かつ楽しいひとときを過ごすことが出来た。インタビューページは、これからの私小説の可能性提示するような興味深いものになると思う。こうご期待というところだろうか。

[梅澤亜由美]


2001.3.1

[研究会]第23回 さらに原稿読みまわし

 まずは、『伊藤桂一作品集』の書評と『版画』(司修著)の書評を読みまわし、梅沢さんの論文「田澤稲舟論」を検討した。第2号の原稿は着々と入稿中。リービ英雄氏とのインタビューが2月27日に行われ、その内容が期待されている。テープおこしは近々終わらせたい。

[姜宇源庸]


2001.3.15

[研究会]第24回 インタビュー原稿確認

 書評原稿の読み合わせとインタビュー原稿の最終確認を行う。インタビュー原稿をは じめ、だいたいの原稿が出揃い、だいぶ雑誌の全容が見えてきた感じだ。

[梅澤亜由美]


2001.3.29

[研究会]第26回 ゲラ校正本格化

 参加者、6名。ゲラとして出来上がっているエッセイや論文、書評などの校正をする。その傍らで尾崎紅葉『青葡萄』、島崎藤村『旧主人』などの原稿を読む。ちょっとずつではあるが、ゴールが見えてきた。これから事務的な作業も増えていくことだろう。自分は実際の研究活動にあまり貢献できなかったので、こういったことだけは役に立ちたい。

[松下奈津美]


2001.3.30

[日誌]『私小説研究』創刊記念日

 今日は『私小説研究』の創刊記念日。思えばちょうど一年前、3月駆け込みセーフで印刷所から送られてきた創刊号を手に取り、それまでの苦労を忘れて喜んだものである。で、一年後の今はというと、まだ編集作業をやっているというていたらく。もちろん、編集作業は遅れ気味であるとはいえ、間違いなく進んでいる。読者のみなさま、今しばらくお待ちください。

[とーます]


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